酸化ストレスが動脈硬化の原因

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酸化ストレスが動脈硬化の原因

院長ブログ

2019/04/09 酸化ストレスが動脈硬化の原因

  • 血管を柔らかくし、血液をさらさらにする内皮細胞の働き

アテローム性動脈硬化の引き金になっているのは血管内皮細胞に対する酸化ストレスです。体の中のすべての血管は一層の内皮細胞によって覆われています。内皮細胞は血管のやわらかさを調節するのに重要な役割を果たしています。また、内皮細胞は血管の中を流れる血液が凝固するのを防いでいます。血液は血管の中を流れている限り固まりません。これは内皮細胞が血液を固まらせない物質を放出しているからです。出血、すなわち血液が血管の外に出ると固まるのは内皮細胞の力が及ばなくなるからです。

 

  • 動脈硬化の主役、内皮細胞への酸化ストレス

内皮細胞の正常な働きを妨害するのは内臓脂肪細胞などから放出される炎症性サイトカインやアンジオテンシンIIなどの悪玉ホルモン、そして喫煙です。これらの悪玉ホルモンや喫煙は血管に慢性的な炎症を引き起こします。風邪を引いてのどが赤く腫れ、痛みを感じるように、痛みの神経が存在する部位では炎症を自覚できますが、血管内膜のように痛みの神経がないところでは炎症による自覚症状は出ません。血管が「沈黙の臓器」と呼ばれる所以です。

炎症性サイトカインやアンジオテンシンIIは、内皮細胞の中のNADPH酸化酵素の働きを高めて活性酸素を放出させます。NADPH酸化酵素は白血球が活性酸素で細菌を殺すために常時働いていますが、内皮細胞などでは炎症性サイトカインやアンジオテンシンIIの刺激がないと活性化されません。

NADPH酸化酵素由来の活性酸素は、*内皮型一酸化窒素合成酵素 [Endothelial Nitric Oxide Synthase (eNOS; イーノス)]を脱共役します。脱共役とは、酵素が本来強く結びついている反応とは異なった物質を作り出す化学反応です。eNOSは内皮細胞の中でL-アルギニンというアミノ酸と酸素から*一酸化窒素[Nitric Oxide (NO; エヌオー)]を合成する酵素ですが、脱共役を起こすと、NOではなくスーパーオキシドを放出します。NOは第八章「若返りの原動力、一酸化窒素」で詳しくお話ししますが、強い抗酸化作用を有し、動脈硬化の進展を抑制するフリーラジカルの気体です。したがって、NOの代わりにスーパーオキシドが産生されるのは血管にとって大きなダメージです。

 

  • 高尿酸血症と酸化ストレスの原因、キサンチン酸化酵素

痛風の原因となる尿酸はキサンチン酸化酵素によって生成されます。キサンチン酸化酵素も、喫煙や悪玉ホルモンによる内皮機能障害によって活性化され、内皮細胞から活性酸素を放出させます。メタボリックシンドロームはしばしば高尿酸血症を合併しています。高尿酸血症は、痛風以外に尿路結石、腎障害、関節炎の原因となるだけではなく、すでに血管に酸化ストレスが加わっていることを知らせるサインです。

 

  • 障害された内皮細胞が呼び寄せるマクロファージ

酸化ストレスで障害された内皮細胞は、「ケモカイン」(単球などの白血球に作用し、その物質の濃度勾配の方向に白血球を遊走させる活性を持つサイトカイン)や、それらを内皮細胞に接着させる「接着因子」と呼ばれる化学物質を産生します。ケモカインによって血管内膜に集合した単球はマクロファージへと分化します。血管壁に浸潤したマクロファージも活性酸素の放出に一役買っています。

 

  • LDLコレステロールを酸化する活性酸素

血管壁で産生された活性酸素は血管内膜に取り込まれたLDLコレステロールなどのいわゆる悪玉コレステロールを酸化して酸化LDLに変化させます。高LDLコレステロール血症が問題となるのはこの時です。

 

  • マクロファージに飲み込まれる酸化LDLコレステロール

マクロファージの細胞表面にはCD36と呼ばれる酸化LDLを認識し、処理するスカベンジャー受容体があります。マクロファージはこの受容体をを介して酸化LDLを飲み込み、泡沫細胞に変化します。顕微鏡で血管を見ると、蓄積した酸化LDLがマクロファージの細胞内で泡粒のように見えるので泡沫細胞と呼ばれています。泡沫細胞からは血管中膜に存在する平滑筋細胞を遊走、増殖させる血小板増殖因子などのサイトカインが放出されます。血管壁が肥厚、内腔が狭くなって血液の通りが悪くなるという変化が全身の動脈でみられ、血圧が上がってくる時期です。

 

  • 泡沫細胞となって死滅するマクロファージ

泡沫細胞は、やがて酸化ストレスによって死滅します。この時の泡沫細胞の死に方が問題です。アポトーシスは本来、炎症をきたさない自殺のプロセスですが、後述するアディポネクチンが不足して泡沫細胞が速やかに除去されないと、細胞の内容物が漏れ出して炎症を引き起こします。また、強い酸化ストレスで泡沫細胞がいきなりネクローシスで死んだ場合にも炎症が惹起されます。

 

  • アテローム性プラークの形成

炎症反応は、マクロファージを呼び寄せ、さらなる泡沫細胞死の増加という悪循環をもたらします。泡沫細胞の死骸が集積してできたのが壊死中心です。壊死中心には血管に生じた炎症を修復するために線維芽細胞と呼ばれる細胞も集まってきます。怪我をしたときに、傷が盛り上がってかさぶたができるのは線維芽細胞の働きです。この線維芽細胞によって壊死中心はコラーゲンと呼ばれる線維で固められます。アテローム性プラークとは壊死中心やそれを包みこむコラーゲンからなるコブです。

 

  • アテローム性プラークの運命

このアテローム性プラークがどのような運命をたどるかによって病気の運命も変わってきます。

もし血管への酸化ストレスが減少し、血管内の炎症反応が収束に向かえば、アテローム性プラークはコラーゲンが主体のいわゆる「安定プラーク」となって、労作時にのみ胸痛がおきる「労作性狭心症」となります。労作時にのみ胸痛がおきるのは、冠状動脈が狭くなって血液の通りが悪くなり、心臓に負荷が加わった時だけ心筋の酸素需要を満たすことができなくなるからです。労作性狭心症で命を落とすことはまずありません。

 

  • 狭心症から心筋梗塞へ

内皮細胞やマクロファージから活性酸素が放出され続ければ、コラーゲンでできた線維性被膜はマトリックスメタロプロテアーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素によって分解され、薄っぺらになってしまいます。これは「不安定プラーク」と呼ばれ、極めて破裂しやすい性質を持っています。薄い線維性被膜が血圧上昇などの血管に加わった物理的ストレスで破れると、壊死中心の内容物が血管内に漏れ出します。そうなると、血管の内腔に血の塊、すなわち血栓が形成され、冠状動脈は閉塞します。血栓は血液を固める働きをする血小板に赤血球などの血球成分やフィブリンなどの凝固因子がからまってできたイチゴジャムのような性状です。この状態が二十分以上持続すると、ATPが枯渇してネクローシスで死に始める心筋細胞が出て来ます。狭心症と違い、冠状動脈が閉塞すると安静にしても痛みは治まりません。

心筋梗塞で広範囲の心筋が壊死に陥ると、心臓のポンプ機能が障害されて心不全となるか、壊死に陥った心筋から異常な電流が発生して不整脈を招きます。心筋梗塞は医学が進歩した今日でさえ、一○%近い死亡率をもたらす恐ろしい病気です。たとえ救命されても、心不全によって日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。このように、狭心症や心筋梗塞の原因となる動脈硬化は、血管への酸化ストレスが引き金となります。

 

 

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